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北東と南西の気候がまったく異なるスリランカは、いったいいつ観光すべきか?

南の島スリランカ。
インド洋に浮かぶこの小さな島国は、同じ一枚の地図の中でまるで二つの国のような表情を見せます。北東部と南西部。その気候の違いは驚くほど大きく、旅の季節を間違えると、青い海のはずが灰色の波に変わってしまうほどです。

旅の計画を立てるうえで「いつ行くか」は誰もが気になるテーマですが、スリランカではもう一歩踏み込み、「どの地域に行くか」を軸に考える必要があります。それほどまでに、季節風(モンスーン)の向きによって風景も空気も変わるのです。

二つのモンスーンがつくる「ふたつのスリランカ」

スリランカの気候を形づくるのは、モンスーン(季節風)と呼ばれる海からの風です。この風は一年を通じて方向を変え、雨を連れてくる季節も場所も交互に入れ替わります。

南西モンスーン(5〜9月)は南西側に雨をもたらし、北東モンスーン(11〜2月)は北東側に雨をもたらします。つまり、同じ時期でも北東が雨なら南西は晴れ、南西が雨なら北東は晴れ。まるで季節が反転する国と言えるほど、地域ごとにまったく違う顔を持っています。

このため、スリランカ旅行のベストシーズンをひとことで言い表すことは難しく、訪れる地域によってまったく答えが変わってしまうのです。

主な観光地は南西部に集中している

では、実際に観光客が訪れるのはどの地域なのでしょうか。答えは明確です。スリランカ観光の主舞台は南西部です。

・コロンボ(空の玄関口であり、国際都市)
・ゴール(世界遺産に登録された美しい旧市街)
・ベントータ、ヒッカドゥワ(マリンリゾートの宝庫)
・キャンディ(仏歯寺で知られる古都)
・ヌワラエリヤ(紅茶畑が広がる高原避暑地)

これらの街はどれも、南西モンスーンが去ったあとの乾季(12〜3月)が最も過ごしやすく、青空が安定し、海も澄みわたる季節を迎えます。

旅行者が思い描く南国スリランカのイメージ――白い砂浜、ヤシの木、紅茶の香る丘陵、寺院の鐘の音。その多くは、この南西の乾季にこそ出会える風景です。

南西に合わせて旅を組むのが賢い選択

地図の上では小さな島でも、スリランカは気候の分布が複雑です。しかし、旅行という観点から見れば、実際に観光インフラが整っているのは南西エリアが圧倒的です。

空港(バンダラナイケ国際空港)もコロンボの北にあり、ホテル、鉄道、ガイド、交通手段の多くが南西部を中心に稼働しています。つまり、スリランカの観光産業そのものが南西の乾季を基準に動いているのです。

たとえ北東部が晴れていたとしても、観光客向けのホテルや移動手段が限られ、一部の地域では現地旅行会社のサポートが必要になる場合もあります。旅の快適さと安全を重視するなら、南西部の乾季を選ぶことが最も現実的な選択と言えます。

季節ごとの特徴を知れば、旅のリズムが変わる

ここで、スリランカの年間スケジュールをもう少し詳しく見てみましょう。

12〜3月:南西部のベストシーズン(乾季)
観光・海・文化のすべてが輝く季節。日差しは強いものの、湿気が少なく快適。

4〜5月:季節の端境期
短時間のスコールはあるが、旅行自体には問題なし。人も少なく、静かな旅ができる。

6〜9月:南西モンスーン期
海は荒れやすく、ビーチリゾートはオフシーズン。代わりに高原地帯が美しい時期。ヌワラエリヤやキャンディでは涼しい避暑が楽しめます。

10〜11月:全国的に雨が多い時期
モンスーンの入れ替わり期で、道路がぬかるみやすく、観光には不向き。避けるのが無難です。

北東部を訪れるなら、5〜9月が狙い目

一方、北東部(トリンコマリーやジャフナなど)は、南西が雨の時期に乾季を迎えます。東海岸のビーチはこの時期が最も穏やかで、海も透き通ります。

ただし、東部はまだ観光地化の進行が緩やかで、ホテルや交通の選択肢は少なめ。個人旅行者には少しハードルが高い一方、人の少ないビーチでゆったり過ごしたい方には理想的なエリアです。

一年中どこかが晴れている国という魅力

スリランカの面白さは、同じ国の中でまったく違う気候が共存していること。北東が雨なら南西が晴れ、南西が雨なら北東が晴れる。どこかが必ず乾いている――それがこの国の最大の魅力です。

つまり、旅人の選び方次第でいつでも楽しめる国でもあります。観光地のバリエーションが広く、気候を理解すれば、どの季節にもその季節ならではの風景に出会えるのです。

スリランカの乾季に出会える理想の旅時間

では、実際にいつ行くのが一番良いのか。答えはシンプルです。12月から3月、南西部に合わせて旅をすること。

この時期、南西海岸は穏やかな光に包まれ、ビーチリゾートが一年で最も華やぐ季節を迎えます。ゴール旧市街では、オランダ統治時代の街並みに花が咲き、キャンディの朝霧の中では仏歯寺の鐘が静かに響きます。

紅茶畑の丘を走る列車から眺める景色も、乾季ならではの澄んだ緑色。雨の心配をせずに移動できるため、限られた日程でも効率よく巡ることができます。

旅は地図よりも季節で選ぶ

スリランカの旅は、地図を見るよりも風の向きを知ることから始まります。同じ島でも、季節が違えばまったく別の国のよう。しかし、観光の中心が南西にある以上、南西の乾季を基準に旅を組むのが最も確実です。

北東と南西の気候が異なるという一見ややこしい気象は、見方を変えればどの季節にも楽しめる国ということ。

南西の光に包まれる12〜3月。その穏やかな季節こそ、スリランカの本当の魅力に出会える時間です。

旅は、天気予報よりも、風の声を聴くもの。風が南から静かに変わる頃、スリランカはもっとも美しい表情を見せてくれます。

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