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ギマラスマンゴーとは?女王を魅了した世界一甘い果実の秘密

フィリピン中部に浮かぶ小さな島、ギマラス島(Guimaras Island)。
多くの島々に囲まれたビサヤ地方にあって、地図では見落としそうな島ですが、この地で育つ果実は、世界の食通や王室さえも魅了してきました。
それが、黄金色に輝く「ギマラスマンゴー」。

この果実は単なる南国のフルーツではありません。
外交の場で贈られ、女王を虜にし、日本の政治家までを動かした――まるで伝説のような物語が、このマンゴーには息づいています。

Source: THEPHILBIZNEWS

「女王陛下を虜にした」奇跡のマンゴー

ギマラスマンゴーを語るとき、必ず登場するのが、英国の故エリザベス女王二世にまつわる逸話です。
かつて女王がこのマンゴーを口にした際、あまりの美味しさに感動し、
「他のマンゴーは食べません。ギマラスマンゴーだけを」
と語ったと伝えられています。

この出来事は実際に知られた史実であり、ギマラスマンゴーが国家元首をも魅了した果実であることを示しています。
その繊細で芳醇な甘さ、酸味のほとんどないなめらかな舌触りは、まさに“マンゴーの最高峰”と称され、
「世界で最も甘いマンゴー」と評されるフィリピンのカラバオマンゴーのなかでも最高級品とされています。

日本の政治家を動かした「一口の衝撃」

ギマラスマンゴーの魅力は、海を越えて日本にも届きました。
かつて高知県知事を務めていた橋本大二郎氏が、現地でこの果実を試食した際、
その濃厚な甘さに驚き、日本への輸入を本気で検討したといいます。

しかし、現実の壁は厚いものでした。
ギマラス島は外部から他地域のマンゴーを持ち込むことを固く禁じており、
病害虫防止と品種保全のため、島全体が“隔離栽培地”として厳格に守られています。
さらに、日本の検疫基準も高く、大規模輸入には課題が多かったため、
残念ながら商業ルートでの実現には至りませんでした。

それでもこの試みは、地方の知事が国境を越えて挑戦した稀有な事例として語り継がれています。
それほどまでに、ギマラスマンゴーの甘さには“人を動かす力”があったのです。

「世界一甘い島」が守る誇り

ギマラス島のマンゴーが他と決定的に違うのは、その環境と人々の努力にあります。

火山性の肥沃な土壌に加え、昼夜の温度差と適度な海風。
これらが果実の糖度を極限まで引き上げ、20度を超える天然の甘さを生み出します。
しかも、島内では農薬使用を最小限に抑え、幼果は一つ一つ手作業で紙袋に包まれます。
それはまるで、芸術品を扱うような繊細さ。

ギマラス島では他地域からのマンゴーの持ち込みを完全に禁止し、
品種汚染を防ぐための検査を徹底。
つまり、島全体が“マンゴーの聖域”として運営されているのです。

この徹底した品質管理が、何十年もの間、あの濃密で純粋な甘さを守り続けてきました。

B級品ですら、他を凌ぐ味わい

ギマラスマンゴーの最高級A級品は、主に政府関係や高級ホテル、輸出用として扱われます。
その一方で、形が不揃いだったり、表面に小さな傷がついたりしたB級品も存在します。

しかし、驚くべきことに、このB級品でさえ他地域のマンゴーとは比較にならないほど美味。
果汁がたっぷりで、香りが深く、舌の上でとろけるような食感を持ちます。

これらの果実は、ギマラス島の対岸にあるイロイロ市や、
ネグロス島のバコロドの市場などに出回り、
地元の人々や旅人が気軽に楽しむ“日常の贅沢”となっています。

「B級でこれほど甘いのなら、A級はどれほどだろう?」
そう思わせるほど、島全体の土と気候が育む味は格別なのです。

マンゴーがつなぐ“外交”と“文化”

ギマラスマンゴーは、単なる果物ではなく、フィリピンの“顔”とも言える存在です。
国際博覧会や公式晩餐会の際には、しばしば贈答品として登場し、
その度に「フィリピン=温かく甘い国」という印象を世界に広めてきました。

日本でも、限定的ながら高級果物店やレストランでギマラスマンゴーを扱うところがあり、
その希少性から“幻のマンゴー”として知られています。
一口食べると、甘さの奥に潮風と太陽の記憶が感じられ、
南国の豊かさがそのまま舌の上に広がるようです。

フィリピンが誇る「黄金の果実」

ギマラス島では、毎年5月に「マンゴーフェスティバル(Manggahan Festival)」が開催されます。
街中が黄金色に染まり、人々が踊り、歌い、太陽のように輝く笑顔で観光客を迎えます。
島の人々にとって、マンゴーは単なる果実ではなく“生きる誇り”なのです。

「この島には、世界で一番甘いマンゴーがある」
その言葉を胸に、農家たちは今日も変わらず、次の季節の果実を育てています。

人を動かす“本物の味”

ギマラスマンゴーは、単なる果物ではありません。
それは、女王を感動させ、日本の政治家を行動させ、
世界中の人々を笑顔にする“外交の果実”です。

一口食べれば、そこには自然と人の努力、誇り、そして愛情が凝縮されています。
もしフィリピンを訪れることがあれば、ぜひギマラス島で本場の味を体験してみてください。
きっと、あなたの記憶にも残る“人生で一番甘い瞬間”になるはずです。

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