旅行先として人気の高いベトナム。とくにホイアンやハノイ、ホーチミンなどでは、屋台やローカル食堂の料理を楽しみに訪れる観光客も多いですよね。その中でも「バインミー(Bánh mì)」は、フランスパンに具材をはさんだ軽食として有名で、ベトナムを象徴するグルメのひとつです。
しかし最近、このバインミーを原因とする食中毒の報告が増えているのをご存じでしょうか。ここでは、その背景と原因、そして旅行者が注意すべきポイントを、現地の衛生事情とあわせて考察します。

バインミーとは?人気の裏に潜むリスク
バインミーは、フランス統治時代の影響を受けたベトナムのサンドイッチ。
パリッとしたバゲットに、ハム、レバーパテ、なます(大根とにんじんの酢漬け)、香草、チリソースなどをはさみます。安くて美味しく、屋台でも気軽に買えることから、地元民にも観光客にも愛されています。
ただし、その人気の裏には衛生リスクがあります。
バインミーは常温で販売されることが多く、具材の多くが事前に調理・保管されたもの。とくに肉類やパテ、マヨネーズなどは高温多湿の環境では細菌が繁殖しやすいのです。
冷蔵設備が十分でない屋台では、朝仕込んだ具材を夕方まで使い続けることも珍しくありません。これが、ベトナムでバインミーを食べてお腹を壊す人が多い理由の一つです。
ホイアンで起きた食中毒事例
観光都市ホイアンでは、ここ数年で外国人観光客の間に食中毒被害の報告が相次いでいます。
とくに2023年から2024年にかけては、SNS上でも「バインミーを食べて腹痛」「夜中に嘔吐した」などの投稿が見られました。現地メディアによると、原因として最も多かったのが肉類とマヨネーズの保存不良。気温30度を超える環境下では、わずか数時間でサルモネラ菌や黄色ブドウ球菌が繁殖します。
ホイアン旧市街の屋台は観光客向けに人気ですが、衛生管理の基準が店によって大きく異なるのが現実です。清潔な手袋を使わない、手洗いが徹底されていない、具材をむき出しで置いている──こうした光景もよく見られます。
このような環境で作られた食品は、見た目がきれいでも安全とは限りません。

ベトナムの衛生基準と日本との違い
日本では、食品衛生法に基づいて厳格な温度管理や調理ルールが定められています。
一方ベトナムでは、政府が衛生対策を強化しているとはいえ、地方や個人経営の屋台では管理が徹底されていないことが多いのが現状です。
とくに地方都市では、水道水や氷の扱いにも注意が必要。生野菜を洗うのに使われる水が不衛生な場合、サルモネラ菌や大腸菌が付着することがあります。こうしたリスクは、観光客の胃腸にとってはかなりの負担です。
現地在住者の間でも、「暑い日はマヨネーズ入りのバインミーは避ける」「屋台よりも冷房のあるカフェで食べる」という自己防衛が一般的になっています。
なぜ食中毒が多いのか──3つの要因
ベトナムで食中毒が多い理由は、大きく分けて次の3つです。
- 高温多湿の気候
35℃を超える暑さの中では、細菌が数時間で増殖します。とくに肉類や卵、パテは危険です。 - 屋台文化の根強さ
ベトナムでは屋外での飲食が日常。冷蔵庫や冷凍庫を持たない店舗も多く、衛生よりも「早く・安く」が優先される傾向があります。 - 観光需要の急増
観光客の増加により、一部の屋台が「スピード重視」で販売を拡大。結果として、調理や保存が雑になってしまうケースが増えています。
これらが重なることで、食中毒のリスクは一気に高まります。
観光客ができる対策
それでも、せっかくのベトナム旅行でバインミーを我慢するのはもったいないですよね。
安全に楽しむためには、次のポイントを意識するとよいでしょう。
- 人気のある屋台・Google評価の高い店を選ぶ
観光客が多く、回転の速い店は食材の鮮度が保たれやすい。 - 朝・昼の早い時間に食べる
夜になると、日中の暑さで食材が劣化している可能性があります。 - マヨネーズや生野菜抜きで注文する
シンプルな具材にすればリスクを下げられます。 - 手指を消毒してから食べる
自分の手からの細菌感染も防げます。 - 体調が悪いときは屋台食を控える
免疫が落ちている状態での屋台食は危険です。

現地で体調を崩したら
食中毒の症状(腹痛・嘔吐・発熱・下痢)が出た場合は、我慢せずにすぐに病院へ行くことが大切です。
都市部では外国人旅行者向けのクリニックも増えており、英語対応の医師がいる病院もあります。軽症であっても、脱水を防ぐために経口補水液(ORS)をこまめに摂取してください。
また、保険に加入している場合は、キャッシュレスで治療できる病院を事前に確認しておくと安心です。ベトナムの医療費は日本よりも安いですが、外国人向け病院では料金が高額になることもあります。
リスクを知って、楽しく食べよう
バインミーはベトナムを代表する絶品グルメ。
ただし、高温多湿・衛生管理のばらつき・観光地特有の急速な商業化によって、食中毒のリスクは確実に存在します。
安全に楽しむためには、店選びと食べ方に注意することが一番のポイントです。
旅行者自身が「清潔な環境を選ぶ」という意識を持つだけで、リスクはぐっと下がります。
せっかくのベトナム旅行を台無しにしないよう、少しの知識と注意で、おいしい体験を安全に楽しみましょう。
※参照記事(サラトラベルベトナム「またまたベトナムでバインミー食中毒」):
